"利休蔵"
今回は、いよいよこのお酒が登場します。
大阪府堺市に復活いたしました酒蔵さん、堺泉酒造有限会社さんが造った日本酒"利休蔵(りきゅうぐら)"の純米酒バージョンであります。

このお酒はかなり前、女房とaiちゃんが地元寺内町のイベントに出かけた折、どこかのブースで見かけたので買って来たとか。
これしか手頃なお値段のお酒はなかったとか云っておりましたが、なかなかどうして、こいつもなかなかの逸品、グッジョブでしたね〜。

と云う事で堺市に復活した酒蔵さんの始めの一歩
2002(H14)年、病に倒れ、一時酒造業から引退していた西条祐三氏が、堺市浜寺で療養していた時耳にした言葉「大正時代には蔵元が100軒以上もあったこの"酒どころ"堺市も年々活気を失い、昭和46年に消えた。」と、彼の仲間が彼を励ます為に掛けた「この堺ならではの酒を造って見てはどうか。」と云う言葉。
この西条祐三氏とは、何を隠そうあの"天野酒"で有名な西条合資会社のかつての蔵元であった。
そしてその後彼が「堺に地酒を復興させたい!」と云う思いを抱いたのは必然であり、その思いを知って更に集まったのは、以前「山田錦」を仕入れていた徳島の農家の人達であり、西條氏を慕って"天野酒"を後にした杜氏さん達。
時を同じくして、室町時代から名泉と云われた開口神社にある井戸"金龍井"を整備して近代の堺を支えた酒造業を復活させたいと云う堺のまちづくり団体"大小路界隈「夢」倶楽部"の熱い思いも重なって、2005(H17)年大阪は堺市に有限会社さかい銘醸として(40年振りに)が誕生。
当初は、その頃では珍しい(今は珍しくありませんが・・・)他社の酒蔵のタンクを借り自社の社員が仕込むと云う醸造方式で生産を開始、その名前をこのお酒造りに携わった全ての人々の思いを総括した"夢衆"とし、出来たお酒はふくよかな旨味たっぷりでトロットロの甘口のお酒(西条氏の好みです)であったとか。
二歩目は-。
2014(H26).12.26、お酒造りの傍ら堺市内での酒蔵開設の為の準備を進め約10年(紆余曲折あったそうです)、念願の酒造免許も取得、ようやく小規模ながら堺市堺区北花田口町に自社の酒蔵を構える事が出来、社名を堺泉酒造有限会社として再スタート。
初年度から2年弱ながら毎年50石(1.8L換算で約5,000)の製造量だったとか。
三歩目!
2016(H28).08末、密かに同市内で計画を進めていた10倍規模の醸造能力を持つ新蔵が堺区甲斐町西に新たに完成、9月に移転、10月から醸造をスタート。
麹室が新しくなり、冷蔵施設も完備、水周りも良くなったとかで、新しく造られたお酒は酒質が変わり、きりっとした辛口に仕上がっていたとか! (ふむふむ、蔵癖が変わったのかしらん)
そして現在お酒は順調に量産され、その内の一本がここに来たと云う事です。

そんな"利休蔵"(の純米酒)頂きます。
香りは無し、クリヤーなお酒ですね。
一口飲むと、甘味の少ない(酸味の強い?)お酒の旨味が口一杯に広がります。
その中で僅かに口の中を"ぴりっ"と刺激するので、ひょっとするとこれは所謂"辛口"?なのかしらん(多分違うと思う・・・)。
まぁ、こいつは"甘口"なんでしょうがあっさりとした甘味なので、全体的には"キリッ"と引き締まった美味しいお酒には違いありません。
("山田"君の?)コクもありその余韻が長く続きますので、長く美味しさが味わえるちょっとお得な日本酒です(なんちゅう表現・・・)。
でもこれが純米酒と云う事を考えると、これはポテンシャルの高いお酒ですよ。
どうです? 皆さんも是非1本如何ですか?(笑)
以上、堺に誕生した"利休蔵"は、誠に美味しいお酒でありました。

因みに戦後、堺にあったとされる酒蔵さん。
例えば戦時統制下の下18軒の酒蔵を一本化した堺酒造株式会社は、新泉酒造株式会社となり堺市に留まるも、1966(S41)灘の酒蔵"百万両(ひゃくまんりょう)"の百万両酒造株式会社と合併、百万両新泉酒造株式会社としてS50年頃まで堺の甲斐町で醸造、その後灘に生産を集約するもメルシャン株式会社に吸収され、阪神・淡路大震災後はメルシャンの他の工場で"百万両"の銘柄で生産されていた様ですが、現在は消息不明。余談ですがメルシャンは今はキリン株式会社の傘下に入っています。
他には"都菊"の肥塚酒造株式会社は、S40年代に灘に移転後、1978(S53)年"剣菱"の剣菱酒造株式会社へ(メイン?の)蔵を譲渡、肥塚酒造株式会社さん自体は"千緑(せんりょく)"の"魚崎酒造株式会社さんの処に移動(魚崎酒造株式会社さんが吸収?)、しかし阪神・淡路大震災に遭い、1981(S56)再び剣菱酒造へ蔵を譲渡、この時点で"都菊"の名前は途絶えたと思われます。
また"金露(きんろ)"の金露酒造株式会社は、1964(S39)年に灘へ移転するも阪神・淡路大震災に遭い1997年廃業、しかし酒名の"金露"は"日の出みりん"でお馴染みのキング醸造が引継ぎ現在も製品化されているとか。
以上はほんの一部ですが色々調べて見ましたら、非常に興味深い事が出るわ出るわ。
社名も結構変化が激しいので、これはほぼH30頃の事と思って下さい。
しかし酒蔵さんの歴史も又、面白いですね〜!

使用カメラiPhone6s、H30.07.05、aiちゃん撮影。
 
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